運営方針
趣 旨
農業を取り巻く環境は年々厳しくなっています。高齢化と担い手不足による急速な生産者数の減少、気象変動を原因とした栽培環境の変化など産地が抱える課題に加えて、消費においても人口減少に伴う競争の激化、高齢化や少子化、販売チャンネルの多様化など販売環境も大きくかつ速く変化しています。この中で農業者が生き残っていくために必要なことは、栽培環境と販売環境の変化に対応する能力を高める事しかなく、「安定して作れること、出荷できること」が可能な農業技術を開発し習得することは最優先課題であります。
「土づくり」は多くの農業者が栽培において重要な要素と認識していますが、農業技術として確立されたものは全くと言ってありません。「土づくり」の定義すら明確な共通認識がないのが現状です。研究会は、唯一実践されてきた土壌物理性を切り口にした農業技術開発を軸に「土づくり」を科学的にとらえて、多くの農業者が再現可能な農業技術として理解し、実践できるようなるための場になります。また、「土づくり」は、栽培品目や販売先の違いに関係なく露地栽培(施設土耕栽培を含む)において共通する基礎技術であり、その点で多くの農業者が開発した農業技術を活用することが可能であります。
本当に有効な農業技術は、開発者の経験や勘、試行錯誤をもとに培われてきましたが、長い年月がかかることや本人と一部の人だけが実践できるという点で、固有の技術に留まっているのが現状です。今後、起こるであろう変化のスピードや大きさに対応するためには、出来る限り短期間で多くの農業者が実践できる技術にブレークダウンする必要があります。そのためには、同じ課題を「集団知」によって答えを導き出す仕組みを作る必要があります。
設立に至るまでの経過
土壌物理性を切り口にした農業技術開発は10年以上の実績がありますが、企業が非公開で取り組むケースがほとんどのため、一般的な手法として評価されることはほとんどありませんでした。
しかし、データから導き出される解析結果は明確で、気象など不確定な要素が絡み合う農業において、唯一、工程管理ができて成果に結びつく指標として有望であることは間違いありません。一方、今まで企業との取り組みが中心であった一番の理由は、実証プログラム構築、データ収集、解析といった技術開発コストが年間数百万以上かかることでありました。
そこで、多くの農業者が参加することで各人の技術開発コスト負担を抑える仕組みと開発された農業技術をプールし、多くの農業者が利用できる仕組みを併せ持つ組織を研究会として設立するに至りました。
なお、幸いなことにカルビーポテト株式会社で実施された土壌物理性を切り口とした農業技術開発については、同社が発行している専門誌「ポテカル」の2004年11月号から2006年9月号にわたって詳細な内容や成果、今後の可能性について明記してあります。一読されれば日本の農業技術開発において、イノベーションを起こすことができる余地が十分残されていることを実感して頂けます。